交配を調べる -The International Orchid Register

今回の役立つ豆知識はRHS(The Royal Horticultural Society、王立園芸協会)の運営するThe International Orchid Registerを使って交配種の情報を調べる方法です。プロもアマチュアも使う頻度の非常に高いサイトだと思いますので、使い方をマスターして役立てましょう!


サイトにアクセスするとこんな画面が表示されます。

ここでは2種類の検索が可能です。1つ目のParentage searchは交配親の情報から交配名やその情報を検索します。2つ目のGrex name searchは交配名から登録情報や親の名前などを調べることができます。


交配親の情報から調べる -Parentage search-


交配の両親や、片親が判明している時に交配名や登録情報を調べたり、特定の組み合わせから、その組み合わせを親にした交配が登録されているか調べるのに使います。




Parentage searchのテキストボックスは4つ、種子親の属名、種小名(もしくは交配名)、花粉親の属名、種小名(もしくは交配名)があります。それぞれを入力して、Searchボタンをクリックすれば結果が表示されます。

片親から検索することもできます。

例えば、

Seed ParentのGenusとGrexに“Cattleya”と“coccinea”とそれぞれ入力してsearchボタンをクリックすると、Cattleya coccineaを種子親として登録された交配が検索できます。Pollen parentのGenusとGrexに入力して検索すると、Cattleya coccineaを花粉親として登録された交配が表示されます。

スペルが1文字でも間違えていると正しく検索できませんので気を付けましょう。スペルがあいまいな時は”%”をワイルドカードのように使って検索することも可能です。

★検索のヒント~逆交配かも?~
ランの交配では、種子親と花粉親を逆にした逆交配にも同じ交配名が付与されます。しかし、The International Orchid Registerには交配登録の際に受け付けた種子親、花粉親の情報で登録されています。よって、特定の組み合わせの登録が既に存在しているか確認する際は、種子親と花粉親を入れ替えた2パターンを必ず確認する必要があります。また、交配登録では変種や品種は区別されませんので、異なる変種の個体を親にして交配をしても、同じ種名の登録が既に存在すれば、同じ交配名が使用されます。

次は2つ目の検索方法を説明します。


交配名から調べる -Grex name search-


購入した交配種の親を調べたい時などに使うのがGrex name searchです。





Grex name searchのテキストボックスは2つ、属名と交配名です。交配名だけでも検索できます。Grexの入力は部分的な検索が可能です。”Cosmo”と入力して検索すれば、Cosmo-CristaやPakkret Cosmosなど、”cosmo”という文字列を含む交配がすべて検索されます。

部分検索は便利ですが、“Dream”などよく使われる単語になると厄介です。例えば、Dendrobium Dreamという交配種の親を調べたい時にGenusに“Dendrobium”、Grexに“Dream”と入れて普通に検索すると139件の検索結果が表示されてしまいます。

そういったときは、Searchボタンの上にあるExact matchにチェックをいれて検索するとDendrobium Dreamだけがヒットします。

それでは実際に交配登録情報の詳細を見てみましょう。


交配登録情報の見方


先述の方法で検索して見つかった交配名をクリックすると下のような詳細が表示されます。



Laeliocattleya Cosmo-Alohaの詳細画面を例に挙げ、項目ごとに簡単に説明します。

Genusは属名です。現在有効とされているものが表示されます。

Epithetは交配名です。

Synonym Flagは交配名がシノニムであるかどうかです。交配名のシノニムについては次の項目で説明します。

Synonym Genus Nameはシノニムとなっている属名です。属の再編などで属名が変更された場合などに古い属名が表示されます。

Registrant Nameは登録者の名前です。“O/U”は不明であることを指しています。

Originator Nameは交配者の名前です。“O/U”は不明であることを指しています。

Date of registrationは交配登録された年月日です。1990年以前の登録に関しては年のみの記録で、月日はすべて1/1となっています。

最後の項目が親となります。“na”、“uk”などと表示されている場合は親が不明であることを指しています。


最後に、シノニムや同名の交配について説明します。


交配名のシノニムや同名の交配について


Parentage searchで検索をしていると時折、2つの交配名がヒットすることがあります。同じ親の組み合わせに対して2つの交配名が登録されている場合です。




Cattleya dormanianaBrassavola nodosaの交配を検索した画面です。日本ではCarnival Kidsという交配名で時折見かけますが、Gulfshore’s Beautyという交配名もあります。

詳細を開いてみると、比較した画面がこのようになります。左がGulfshore’s Beauty、右がCarnival Kidsです。





同じ親ですが、右のCarnival Kidsは”This is a synonym.”とあり、シノニムとなっています。このように、同じ親の組み合わせが、何らかの理由で複数の交配名として登録されてしまった場合には、基本的に古い方が有効となり、新しいほうはシノニムとして残ります。
とはいえ、日本ではGulfshore’s Beautyと言ってもあまりピンとこない方が多いと思います。


また、異なる属に登録されていた同じ交配名が、属の再編などで同じ属になってしまう場合もあります。CattleyaのC. G. Roeblingがその一例です。どちらも今から100年以上前に登録されたもので、それぞれの交配名の後ろに登録された年がついています。



C. G. Roebling (1895)は’Blue Indigo’という有名個体で知られるC. gaskellianaC. purpurataの交配です。

C. G. Roebling (1916)C. harrisonianaC. mendeliiの交配です。

一つの属に同じ名前の交配が存在するようになった理由は属名の変更にあります。実は、Cattleya purpurataは元々Laelia purpurataでした。すなわち、現在のC. G. Roebling (1895)はLaeliaCattleyaの属間交配、Laeliocattleyaとして登録されていたので、2つのC. G. Roeblingは異なる属の交配名でした。しかし、Laelia purpurataCattleya purpurataになったため、同じ属に2つのC. G. Roeblingが出来てしまい、区別するために登録年が末尾につけられたということなのです。

こういったケースはカトレヤの仲間(特に古い原種同士の交配)ではよく見かけます。


以上、RHSのThe International Orchid Registerを使った検索方法の解説でした。もう少し便利で情報量の多いサイトなどもありますが、The International Orchid Registerが正式な情報となりますので、使ったことのない方はぜひ一度アクセスして役立ててみてください!